ボディメイク大作戦

ぱぴこのボディメイク道をとくとみよ!

第五話「鬱然」〜コロナ対策っていうのはわかるけどねっていう話〜

アルミン「やぁ、エレン。減量の経過はどうだい?」

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さわやかやなぁ

エレン「すこぶる順調だよ

フードデリバリーでの有酸素も好調」

 

アルミン「よかったじゃないか!」

 

エレン「ただ…」

 

アルミン「ただ…?何??」

 

~回想~

そう、それはある日の仕事終わり。

私はDiDi Foodの配達員として自転車を走らせていた。

 

「ピローン♪」

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モザイク掛けても丸わかりやん

注文受付の通知だ。

 

 

ちょうど夜ご飯の時間帯だったこともあり、報酬に+120円のボーナスが乗った

いわゆる”おいしい”案件。

迷うことなく注文を受付けた私は、早速お店へと向かった。

 

 

 

重さすら感じるほどの湿気を含んだ空気が、私の体にまとわりつき

とめどなく汗が吹き出してくる。

 

 

 

その汗を吸ったシャツがまた肌に張り付き、不快感を加速させていく。

とはいえ、フードデリバリーは動いてなんぼの商売。

不快感を断ち切るようにペダルをこぐ足に力を入れ、ピックアップに向かう。

 

 

ピックアップ先で受け取ったのはカツとじ丼。

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美味しいんだけどね

 

減量中の私には見た目と匂いだけで胸やけがするような商品を

丁寧にカバンに詰め、配達先を確認。

 

 

…しめた、さほど遠くない。

 

 

フードデリバリーは効率よく回れば回るほど時給換算での稼ぎが良くなる。

近場での配達はありがたい。

 

5分ほど自転車を走らせると配達先にたどり着く。

スマートフォンを操作し、受取の要件を確認する。

 

 

 

 

 

現金支払い

 

 

 

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最近見なくなったね

 

 

 

まさか

 

 

まさかの現金支払いだ。

 

 

DiDiのサービスを使うものが現金支払い。

なぜ、そんな中途半端なサービスの使い方をするんだ。

 

 

内心舌打ちをするが、すぐに気を取り直す。

 

 

Uberは現金支払いでの注文を受付けるか否かを設定できるのだが

DiDiではその選択はできない。させてくれない。

 

 

こんなこともあろうかと

お釣りを用意しておいてよかった。

備えあれば憂いなし。転ばぬ先の杖。

先人たちの言葉はいつも役に立つ。

 

 

 

初めての現金支払いだが

問題はないだろう。

 

 

 

 

改めてスマートフォンの画面を確認すると

配達先は4階と表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

ふむ…

 

……

………

エレベーターがない。

 

 

 

暑さ。

初の現金支払いであること。

異様にアパートの周囲が暗いこと。

お釣り用のお金を確認していた時に蚊に刺されたこと。

 

それら全てが苛立ちに変わり

 

 

「あぁ」とも「うぅ」とも取れないようなうめき声が漏れる。

 

 

苛立ちを込めるように階段を踏みしめ

一段、一段登っていく。

 

 

ようやく四階にたどり着き、インターホンを鳴らす。

 

 

 

反応がない。

 

 

 

もう二度鳴らす。

 

 

 

 

ドアの向こうで人の動く物音が聞こえた。

 

 

ガチャリ

 

 

 

蝶番がわずかに軋みドアが開く。

 

 

出て

 

きたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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本気で思ってないよ



白髪のババア

 

 

 

 

一瞬息が止まる。

 

 

 

しかし、白髪のババアは何も言わずに

私の手から商品をひったくり部屋の奥へと戻っていく。

 

 

 

取り残された私の目には

雑然とした部屋が映っていた。

いや、私も人のことは言えないのだが

それにしても散らっている。

 

 

キッチリ2秒凍り付いた後

あれ、代金は…?

と考えているとババアが戻ってきた。

 

 

「ん」

と一言放ち

何かを突き出してくる

 

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お皿

 





皿だ。

 

 

 

 



 

間違いなく皿。

 

皿の上に代金がぴったり乗っていた。

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別に感染対策としては間違ってないんやけどな!?

 

 

(お釣り事前に予測して用意してたのにちょうど出してくれるんや)

(なんで皿の上?あぁ、コロナ対策か)

(え?こんだけ部屋汚いのにそこは気にするんや)

(てかこの皿カレー食べた後ちゃんと洗ってないやろ)

 

 

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なんなんや!

……

………

エレン「ってことがあってさぁ」

 

エレン「やってることは間違ってないんだけど、めちゃくちゃイラっとした」

 

アルミン「お、お疲れ様…」